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海軍大学校 甲種学生 入学試験問題

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、2018年一発目は海軍大学校の入学試験問題です。
海軍軍人が将官に進級するための登竜門と言われるだけでなく、海軍の中枢部で働く為には
必要だったとも言われる海軍兵科士官の中の更にスーパーエリートを決めるコースでした。
しかし、元々採用人数が少なかった事、日中戦争突入と共に縮小、そして太平洋戦争中に廃止された
事もあって、その実情や目的、教育などは現在も分からないことが多いと思います。

今回の史料はそんな海軍大学校甲種学生の入試問題です。
上記のように謎の多い学校ですが、入学試験の段階でどのような問題を出し、
それによって学生にどのような事を求めていたのかが分かるのではないでしょうか?
そういった意味で、また海軍大学校の問題はなかなか無いようですので
面白い史料になるのではないかと思っています。
ただ、私は海軍軍人でも無いですし軍歴もありません。
そのため問題の意図までは残念ながら分からないと思います。
もし、この問題を見て海自関係者の方などに気づいた事、分かる事があれば幸いです。
また、よろしければその際に私にも教えていただければ幸いに思います。
新年早々お願いのような記事になってしまいましたが許して下さい(汗

それでは紹介して行きたいと思います。
0010_2.jpg


今回使用する史料は、
img383.jpg

こちらになります。
これは、海軍の初級兵科士官がやっておくべき諸問題をまとめた物で、
現在で言うところの赤本のようなものだと思います。
以下に目次を掲載します。

統率教育
時事
砲術
一般戦技
水雷
航海
運用
飛行
機関
通信
自大正四年至昭和四年 甲種対策
乙種対策
航海術研究問題

今回はその中から海軍大学校の甲種問題(参考書等は使わずに時間内に問題を解く形式)と
乙種問題(あらゆる参考書等を使用して一定期間内に出された問題に対して論述する形式)を
紹介したいと思います。
海軍大学校に関する書籍の中でも入学試験問題を列挙しているものは無く、海軍大学校の問題が
纏まって載っているのはかなり珍しいのではないかなと思います。
その他の問題について参照されたい場合は適宜ご連絡下されば幸いです。

このページ内の海軍大学校に関する事は全て実松譲『海軍大学教育』光人社、1993年(以下実松)を参考に書いております。
特に脚注等は付けませんのでご了承下さい。また原文を現代表記に直して記載しています。
なお、ここにある試験問題の無断転載使用を一切禁止します。
何か学術的な事で使用なさりたい場合には必ず事前にご一報下さい。

それでは問題を見ていきたいと思います。

自大正四年至昭和四年 甲種対策

・大正四年
一、並航戦に於て戦隊劣速の敵と斉頭に相対し戦うに当り近接して之を圧せんとするには如何なる運動法を用うべきや
二、「フォークランド」島沖及北海に於ける英独海戦は頗る遠距離に於て行われたが如し、将来の決戦距離に関し所見を述べよ
三、列国大型駆逐艦の装備せる水雷発射管に二十一吋のものと十八吋のものとあり、其の適否に就き所見を述べよ
四、逐次投錨と一斉投錨との利害及用途如何

・大正五年
一、扶桑型戦艦四隻より成る戦隊二個を以て同一勢力なる敵と略斉頭にて並航しつつ中口径砲の有効距離内に於て対抗するときは有利と認むる砲火の管制法を図示し之に対する理由を述べよ
二、白昼艦隊の決戦に於て其の附属二個水雷戦隊を主力の前方及後方に分配すると前方若くは後方の一方に配するとの可否を決定すべき要件を述べよ
三、列線を南北とし北より南に順番号の予定錨地に一斉投錨をなさんとする一戦隊は順番号単縦陣針路西にて錨地の南東方に達し入港速力をα節となせり(此の速力にて錨地迄行くものと仮定す)、然して此附近より錨地に至る間には東南東の潮流ありて其の速力二分の一α節なり、此の場合戦隊を嚮導して錨地に進入するに終始単縦陣を以てすると然らざるものとの二法あり、略図を書きて之を説明せよ
四、「タルピン」式機関と往復式機関とに於て出港準備並に入港に際し注意すべき点の差異を挙げよ

・大正六年
一、敵に先だって砲戦を開始するの可否を問う
二、艦隊戦闘中戦艦巡洋艦の各戦隊の魚雷発射は戦隊又は小隊の斉射若くは各艦各個の発射の内何れを原則とするを可とするや概説すべし
三、航路を選定するに際し単艦と艦隊とに於て如何なる差異ありや
四、艦船就役後に於ける炭費が新造公試運転当時のものに比し著しく差異を生ずる諸原因及之が影響の程度を問う

・大正七年
一、砲戦に於て発射速度命中の精粗何れを重しとするや併て其の理由を問う
二、潜水艇航空機及機雷の進歩に鑑み駆逐隊に搭載すべき兵器の種類及配合如何
三、艦隊運動程式に規定せる緊急一斉回頭につき其の使用の場合及信号法を説明せよ
四、機関部に於ける煤煙幕形式法及其の罐に及ぼす影響を説明せよ

・大正八年
一、砲火集中の利害及適度なる砲火の集中を問う
二、艦隊戦闘に於ける煤煙幕の価値に就き所見を述べよ
三、艦隊航行中霧中に於ける方向転換及投錨の実施要点を記せよ
四、艦隊に於ける液体燃料(重油)の使用が其運動力の上に及ぼす影響如何

・大正九年
一、四隻編成の二隊協同して敵八隻編成の一隊を叉撃する時目標配当に関する守則を列挙し之が理由を示せ
二、魚雷及潜水艦回避の要旨を金剛級軍艦四隻編成戦隊に就き記述し説明を附せ
三、単縦陣にて編隊航行中当直将校として艦位保持に関し注意すべき要件及溺者ありたる場合初めの一分間に於ける処置を述べよ
四、「タルピン」式機械を装備せる艦船の操縦に就き注意すべき事項を述べよ

・大正十年
一、金剛型四隻を以て今夜々戦を決行せんとす、戦隊及軍艦の砲戦守則の一例を示せ
二、軍艦に於ける管外斜進調製製置の利点を列挙せよ
三、艦位測定誤差の諸原因を列挙し作戦上に及ぼす影響を説明せよ
四、帝国海軍に於ける推進機関の種類並に利害を簡単に記述せよ

・大正十一年
一、艦隊戦闘に当り砲火集中限度決定に影響を及ぼす其の要素を論述せよ
二、敵魚雷が戦隊の列中を通過せし時其の効果を左右する要素を説明せよ
三、左記に於て各艦の運動法を説明せよ
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四、近時艦艇機械に減速装置を装備するに至れり理由を説明せよ

・大正十二年
一、軽巡洋艦に於ける方位盤射撃の利害を論ぜよ
二、水雷戦隊の白昼襲撃に於て煙幕利用上考慮すべき要点を述べよ
三、従来我が艦船遭難の事例等に鑑み航行上艦(隊)の保安に関し左記諸官の注意すべき主なる事項を列挙せよ
(イ)艦隊参謀(ロ)航海長(ハ)当直将校
四、我艦船用燃料として如何なるものを最良とするや、並に其の理由を説明すべし

・大正十三年
一、別図に就き青軍艦隊砲火の分配を図示し其の理由を述べよ
二、艦隊昼戦に於ける主力戦隊(八年式魚雷を有するものと想定す)魚雷利用時機に関し所見を述べよ
三、外海に暴露せる港湾在泊中台風の襲来を予期し得たる場合左記職員として来襲前及来襲に際し保安上執る可き処置及考慮すべき要項を述べよ
(イ)駆逐艦長(ロ)軍艦当直将校
四、機関待機準備の区分及方法並に其の目的を説明せよ
五、海洋作戦に於て航空機に期待すべき兵術上の要求を述べよ
六、主力艦の戦闘速力より劣速なる水上速力を有する潜水艦は艦隊昼戦に於て如何なる場合に利用し得るや所見を問う

・大正十四年
一、機関の整理作業に就き知る処を記せ
二、艦隊戦闘に於て水雷戦隊の白昼襲撃の直接効果を期待する場合の各部隊の協同動作の要点を述べよ
三、外海に暴露せる港湾在泊中台風の襲来を予期し得たる場合左記職員として来襲前及来襲に際し保安上執る可き処置及考慮すべき要項を述べよ
(イ)駆逐艦長(ロ)軍艦当直将校
四、視界狭少なる場合の沿岸航行に際する注意事項
五、戦隊統一射撃の利害及実施の概要を述べよ
六、木曽型LCに搭載する陸飛行機の海洋戦に於ける使用法並価値を述べよ
七、艦隊戦闘に於ける潜水艦の散開配備を決定するに考慮すべき要点を述べよ

・大正十五年
一、夜戦に於ける星弾の価値並に之が利用法を述べよ
二、水雷戦隊も夜間敵艦隊攻撃に際し当該指揮官の留意すべき要点につき述べよ
三、艦位の推定に当り考察すべき主要事項に就き述べよ
四、輓近艦船及航空機用推進機関の進歩発展に就き知る所を記せ
五、主力戦隊の戦闘に於て射撃の効果を最大ならしむる為め執るべき主力戦隊と航空隊との協同に関し最良と信ずる方策を述べよ
六、対敵行動中無線電信の使用に関し部隊指揮官として留意すべき主要事項を述べよ

・昭和二年
一、戦艦戦隊間の昼間戦闘に於て砲戦開始距離の選定に関し所見を述べよ
二、(イ)別紙の海図中0符の部に夏季に於ける海流の方向及速力を海図々式に依り記入せよ、但し海流なき場合は「無」と傍記するを要す
(ロ)艦隊泊地選定上注意すべき要件を問う
三、(イ)帝国海軍現用魚雷に就き各艦種に応じ使用上最適当と信ずる調定距離及雷速を列記せよ
(ロ)掃海艇及駆逐艦に供給せる掃海具の種類掃海能力の大要掃海可能の水深の限度を問う
四、戦略運動中新式巡洋艦及駆逐艦が航続距離延長の目的を以て行うべき機関操縦法を列挙し簡単に其の利害得失を述べよ
五、無線電信点止航行中艦隊の通信法は如何にすべきや
六、帝国海軍に現有する巡潜型機潜型海大型の各一等潜水艦及二等潜水艦の兵術上の特質を記せ
七、帝国海軍に現有する飛行機中偵察機攻撃機及戦闘機の任務並に性能を記せ

・昭和三年
一、弾薬節約上考慮すべき事項を問う
二、戦隊指揮官並艦長として霧来襲の前後に於ける保安上に関する処置並霧中航行の要件
三、飛行機の参加が水雷戦に影響せる事項を問う
四、増減速に際し艦艇機関に対し考慮すべき事項を問う
五、短波長の兵術上の価値
六、散開距離、散開間隔決定上の考慮事項

・昭和四年
一、戦艦に於て夜間水雷防禦戦に主砲を使用するの可否を述べ、且之を使用する場合の準則を述べよ
二、艦隊作業地に錨泊する場合錨地計画上準拠すべき要則を列挙せよ
三、主力艦駆逐艦及飛行機用魚雷に要求すべき性能上の差異を述べ且其の理由を併記せよ
四、我海軍に於ける現行無線通信管制法の要領を述べよ
五、現に我主力艦及巡洋艦に搭載せる航空機の海洋戦に於ける用法並価値を問う
六、世界大戦中に於ける著名なる海戦を其の生起の順序に挙げ左記諸項に就き述べよ
(一)参加海軍並に兵力の大要(二)対抗両軍最高指揮官名(三)戦果の大要
七、敵情報告の具備すべき要件を問う
八、出来得る限り航続距離を延長する必要ある場合一般の指揮官として機関の使用に関し特に留意すべきことを述べよ

乙種対策

・大正四年
欧州戦争(一九一四年一九一五年)の実績に依り将来戦艦の形式は如何に変遷すべきや論述せよ

・大正五年
一、軍規に関し自己の経歴及突発を基礎として各自の見解及信条を述べよ
二、欧州戦争中智利沖海戦(大正三年)に就き所見を述べよ

・大正六年
一、本年日本海海戦記念日に際し駆逐艦長として艦員に対する訓戒(約二十分間の)草案を作製せよ
二、潜水艇の兵術的価値を論ぜよ

・大正七年
一、近き将来に於て我海軍に於て必要なる巡洋艦の型式を選定し其の理由を述べよ
二、現戦争に於ける独逸潜水艦の無警告攻撃を批評せよ
(注意)答案を各十頁以内とす

・大正八年
一、欧州戦争中列国海軍艦艇兵器の進歩の状況に就き所見を述べよ
二、独逸巡洋艦「エムデン」の活動力同国の作戦に与えたる利益を論述せよ

・大正九年
一、名将の事跡を引証し指揮官たる海軍将校に要する資質中智と勇との必要程度を比較論述せよ
二、近き将来に於ける航空機の発達を予想し其の海軍海上に及ぼす影響を述べよ

・大正十年
一、海軍各種艦艇を要する所以並高速戦艦一種を以て戦艦逃戦に代うるの利害を列挙せよ
二、欧州大戦の教訓に鑑み左記の場合に於ける最良なる索敵法を研究せよ
(イ)我が艦隊及輸送艦隊の襲撃を目的とす敵潜に対するもの(ロ)通商貿易の破壊とする敵巡洋艦に対するもの

・大正十一年
一、飛行機及飛行船の戦術並に戦略的価値を論ぜよ
二、今次大戦の教訓に鑑み将来の戦争に於て封鎖の配備形式は如何なるものを採用するを有利とするや(五頁以内)

・大正十二年
一、帝国国防上の見地より潜水艦兵術的価値を論ぜよ
二、下士官兵に対し「軍紀に就て」講話を行うものとし其の講話案を作製せよ

・大正十三年
一、兵術上集中の根本義を論述せよ
二、現下我艦船(又は団隊)に於ける軍紀士気及責任観念に就き所感を詳述し之が適切なる対策を研究せよ

・大正十四年
一、艦隊が対敵行動中洋上に於て燃料補給を実施せんとする場合に於ける警戒法に就き論述せよ
二、我海軍の伝統的精神を論じ之が振興を図る具体策を述べよ

・大正十五年
一、我海軍に於ける兵科将校の教育に関し具体的所見を述べよ
二、航海運用上の技能が兵戦の勝敗に及ぼす影響を論ぜよ

・昭和二年
一、帝国海軍兵力を構成する一要素として近き将来に於て航空機の◯むべき地位如何
二、帝国海軍に於ける軍隊教育上の見地より我国固有の武技と西洋風体技の特質を比較し両者に於て其の実施者が陥り易き欠陥あらば之を指摘し且軍隊の教育指導上特に其の如何なる点に留意すべきやを論ぜよ

・昭和三年
一、帝国将来の主力艦は高速軽防と低速重防と何れをとるやを論述せよ
二、我国現代の社会の風潮に鑑み軍隊教育上特に留意すべき要点並之が対策を論述せよ

・昭和四年
一、帝国国防上一万噸級巡洋艦の兵術的価値を論ぜよ
要目(仮想)
主要兵装
二〇センチ 一〇門
十二センチ 高角砲四門
五三センチ 水上発射管一二門
主要防禦
舷側 三ー四吋
速力 三十三節
航続力 一四節 九〇〇〇浬
二、艦内協同一致の実を挙ぐる諸方策を論述せよ

以上が『初級兵科士官研究問題』にあった海軍大学校甲種学生入学試験問題です。
なるほど、見ていくと同じ様な問題もあり、このような過去問は受験生にとっては得難いものだったのではないでしょうか?(大正十三年と十四年に同じ問題が書かれていますが、これはこの冊子作成者のミスではないかと思います)
そして、これら諸問題を見ていく事で時代ごとに海軍がどのような事に関心を持っていたか、また士官にどのような考えを持って欲しいと思っていたか、が良く分かると思います。
最後にこの問題は果たして本物であるかどうかですが、そこで実松譲の本を使いたいと思います。
実松109頁に海兵44期の小島秀雄少将が海大受験を回想しこう答えています。

われわれのとき(昭和三年)には、乙種対策の兵術問題は、『高速軽防御の戦艦と低速重防御の戦艦とは、日本にとって、そのいずれを可とするや』であった。

この冊子の昭和三年度乙種問題を見てみると、「一、帝国将来の主力艦は高速軽防と低速重防と何れをとるやを論述せよ」とあるので、間違いはなさそうですね。
実際に海大の問題として使われたものだと言えそうです。


今回は珍しい、または本邦初公開の海軍大学校の入試問題でした。
この史料が何かに寄与出来れば幸いに思います。
この項はこれにて終了です。お疲れさまでした。

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